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関東部会は盛会の内に開催出来ました。海事プレス社様のONLINEニュースに掲載されました。
「CTデジタライゼーションが課題 日本港湾経済学会、スマート化・グリーン化で議論」
以下、有料記事です。
日本港湾経済学会は25日、関東部会を開催した。「港湾のスマート化、グリーン化への展望」をテーマに講演や研究報告が行われた。世界で加速するコンテナターミナル(CT)自動化の次のステップとして、「デジタライゼーション」が重要になるとの声が上がり、具体的な取り組みとして、世界ではデジタルツインや垂直ヤードの活用などが進んでいることなどが報告された。こうした技術は脱炭素化にも資するため、日本での導入に向けた課題についても活発な議論が行われた。
冒頭あいさつに立った福山秀夫関東部会長は、「近年は地球温暖化も進み、国連のSDGsが発表され、グローバルな環境対応が求められている。一方で、コロナ禍における国際海上輸送の大混乱はグローバルサプライチェーンの脆弱さも露呈させることになった。現在、海事・物流業界では、サプライチェーン強靭化による効率化と安定化を求める流れと環境対応を求める流れが合流しつつある」と指摘。その上で、「港湾分野においては、サプライチェーンマネージメントとスマート化、グリーン化を目指すカーボンニュートラルポート(CNP)が同時に追求する必要性が高まっている。日本港湾経済学会でもこれらの分野に対する、より深い研究が必要だ」とし、今回の部会開催の意義を強調した。
国土交通省港湾局の辻誠治CNP推進室長は、政府のCNP政策について解説。荷主の脱炭素化ニーズへの対応を通じた港湾の競争力強化と、港湾・臨海部の脱炭素化への貢献を政策の意義として挙げた。現在は、水素・アンモニアなどの受け入れ環境の整備や、船舶への陸上電力供給、荷役機械の水素燃料化、LNG燃料など新燃料のバンカリング拠点の整備を進めている状況だ。昨年には港湾法も改正。今後は改正港湾法に基づき、各港湾において港湾脱炭素化推進協議会が港湾脱炭素化推進計画を作成していく見通しだ。3月13日時点では、全国57港湾でCNP関係の協議会が設置されており、順次、港湾脱炭素化推進協議会に移行していく。
三井E&Sマシナリーの市村欣也戦略企画グループ長は、「コンテナターミナルにおけるデジタライゼーションの現状」と題して講演した。まず、世界のCTにおける自動化導入の現状について解説した後、垂直蔵置のASC荷役方式と平行蔵置のカンチ式RMG荷役方式、平行蔵置のRTG方式など、蔵置レイアウト・荷役形式ごとの自動化CTの特徴について説明した。荷役機械自動化の次のステップとして、「デジタル技術を活用しながらビジネスプロセス自体を変革するデジタライゼーションに、港湾ターミナルとして取り組んでいかないといけない」と強調した。「コンテナ輸送サービスをデジタルで高度化していくことが肝となる」とし、具体例として天津港でスマート・ゼロカーボンターミナルを整備した例や、シンガポール港のターミナルオペレーターPSAがデジタライゼーションを加速している事例などを紹介した。
日本港湾コンサルタントの高橋浩二会長は、「スマート化、グリーン化の課題と今後の展開」と題して講演した。CTグリーン化に向けたゲームチェンジャーとなる技術要素として、(1)デジタルソリューション(Digital Solutions)、(2)自動トラック(Autonomous Trucks)、(3)垂直ヤード(Vertical Yard)の3つを挙げた。(1)については、主にデジタルツインの活用について説明。CTにおけるリアルタイムの状況をバーチャルで再現するデジタルツインは、これまでフェーズ1として危険予知やリスク回避など安全性の向上に使われるケースが多かった。しかし、足元では、「フェーズ2として、荷役機械稼働状況の可視化やターミナル情報の可視化を通じて経営判断に役立てたり、フェーズ3としてAIによるオペレーションの実現に向けた動きも進み始めている」(高橋会長)ようだ。最大能力でオペレーションしたり、ゼロエミッションを重視してオペレーションをしたりなど、「(デジタルツインで)先読みして、最適なオペレーションを図ることができる」と説明した。
(2)については、ハチソンのレムチャバン港のDターミナルの事例を紹介。同CTでは、有人トラックと自動化トラックが同じルートで運用しており、「既にレベル5の自動運転の実装が行われている」と話した。
(3)の垂直ヤードは元々、東京港・大井ふ頭で採用されたコンセプトだが、最近ではDPワールドがコンテナ立体格納庫「BOXBAY」を開発したことを紹介。釜山新港でも導入が決まった。垂直ヤードは、ターミナルのコンセプトを変える荷役方式となっており、狭隘なターミナルでも蔵置・荷役効率を高めることができるほか、荷役における消費エネルギーも節約できる点を特徴として挙げた。太陽光発電の活用や駆動系の技術開発により、荷役のゼロエミッション化の実現や余剰電力を他のシステムへ供給することができる可能性も指摘した。
研究報告では、東京海洋大学学術研究院海洋電子機械工学部門の清水悦郎教授が「船舶海洋分野における自動化・カーボンニュートラル化に向けた課題」、流通科学大学の森隆行名誉教授が「イノベーションが港湾のデジタル化、グリーン化を促進する」をテーマに報告した。