本学会は、2022年9月、第60回記念全国大会を開催しました。学会が創立された1962年の前年、「第一次港湾整備五カ年計画」が策定されました。この計画の中心は港湾施設の充実と高度経済成長の結果予測される海上貨物輸送の増大に対処するものでありました。その後、外貿港の整備と臨海部工業地帯の拡充が行なわれ、1967年、我が国にコンテナ船が就航し、「コンテナ時代」の幕開けとなりました。港湾荷役作業の革新化が進み、コンテナターミナルの整備、荷役機械の導入など荷役作業の効率化が進みました。欧米港湾は、1980年代から港湾における民営化の視点も取り入れました。しかし、コンテナ化の進展は港湾にとって海陸結節点として通過型拠点となってしまい、地域経済にもたらすものが少なくなってきました。欧米諸国の港湾は単なる通過型ではなく、コンテナターミナルの背後地に大規模なロジスティクス拠点を整備し、高付加価値型港湾を形成しています。
さらに、2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により企業のサプライチェーンの分断や海上コンテナの混乱に伴う運賃の高騰など、さまざまな課題を残しました。2022年2月から始まったロシアによるウクライナ侵攻は国際輸送ルートの変更に伴う物流コストの増大などを引き起こしています。近年、政府は、デジタル化、脱炭素化を急速に進めています。
このように、変化する経済社会情勢のなかで企業の生産活動、消費生活を支える港湾や空港の役割は極めて重要なものとなっています。
このような港を取り巻く諸問題の解決に向け、多様な視点から議論を重ね、社会の期待に応えることが当学会の使命です。単なる事象を捉えるだけでなく、その背景にあるものは何か、COVID-19後の次世代港湾のあり方などを発信することが重要であります。
現在、当学会の課題は、会員の高齢化と会員総数の減少です。2020年度に就任された松尾俊彦前会長の時代から今日に至るまで会員の皆様のご協力で若干改善はされてきています。しかし、次世代の学会運営を担う若手の研究者が少ないのが現状です。今後は、全国大会や地方部会において若手研究者の発表の場、表彰制度などを充実させていきたいと考えております。
最後になりましたが、会員の皆様のご理解とご協力を仰ぎながら、学会を運営して参りたいと思いますので宜しくお願い申し上げます。
日本港湾経済学会長 男澤智治












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